【読書】『京アニ事件』(津堅信之 著)

最近は開け放った窓のそばで本をめくっているけれど、今日は風が冷たい!

早くもストールや厚手のカーディガンが必要になってくる頃なのかもしれないなぁ

昨日は韓国系の立ち飲み居酒屋で一杯だけのちょい飲みをした後、気分良く本屋に立ち寄った。秋の夜長というけど、10月の晴れた日の夜はさらっとして過ごしやすくて、軽く呑んだりただ散歩をしたりしてみようかという気分になる。

四条烏丸のバス停が目の前にあるSUINA室町の大垣書店は、フロアにいくつかとても座り心地の良い椅子とスタンドライトとお勧めの本が置いてあるサイドテーブルがセットで設置してあって、購入前の本を座って読むことができるから読み進めるうちに結局買っちゃったりするんだよね〜(カモ)

 

京アニ事件』、私のようなニワカにも有り難い良いまとめです!笑 物語のようにすんなり読めた。

アニメは好きでよく見るものの、私は制作会社・スタッフや業界の事情にあまり明るくないから、昨年起きた京アニ事件について衝撃と悲しみと怒りを感じはしたけれど、事件の詳細や事件後の流れなどの情報は虫食い状態でした。そういった意味でこの本は、事件直後に著者の記録した各種報道内容とか取材を受けた際の質問事項(からわかるメディア側の興味関心)とか容疑者の事件当日までの足取りとか、時系列でまとめられていて手触りのある分かりやすさで良かった。

気になったのは事件現場となった京アニ第一スタジオ跡地をどうするか。公園にして石碑を建てたら聖地巡礼的に観光客が来て近隣住民の生活が脅かされる。コロナ前、京都ではどこでもオーバーツーリズムでしたからね。京アニは海外の著名人からの寄付なども集まったそうだし。どうするのか協議しているうちにコロナ禍… どんな形に落ち着くのか、見届けたいですね!

また、関連したアニメ業界での様々な論争を認識できて、素人としては楽しい一冊となりました。原画の保存の是非や程度をどうするべきかは、原画を保存すべき作品とみるか作品(完成品)の制作途中に出た中間生成物とみるかで変わってくることや、制作スタジオの東京一極集中化の問題やアニメーターの労働契約のことなどを京アニは独自のスタイルで克服しているらしいことなど、今後の論争の行く末や業界の変化を追ってみたくなるトピックがいっぱいでした!

 帯は「専門家はなぜ、沈黙したのか。」。過去のアニメ関連の事件(直接関連していなくても)で、憶測からアニメが悪者にされたことがあって、経験した世代はメディアに対する不信感が強いらしい。まぁそうだよね…と思う。小説、漫画、ゲーム… サブカルチャーメインカルチャーとして市民権を得るまでには様々な戦いがあっただろうな。ゲームも「またゲームなんかして…」って感じだったのに、今やeスポーツはオリンピック種目だし世界的にはゲーマーはプロフェッショナルとして認められつつある。

 

私の中にも今までは「アニメなんて」という気持ちが少なからずあったからか、作品を楽しみはすれど、学問としてさらに詳しく網羅的に知ろうとしたり産業として業界の仕組みを理解しようとすることはなかったなぁ

だから私のアニメ作品との付き合いは娯楽、それ以上でも以下でもなくて、過去作品なら1クールを一気見したり、休日に一日かけて2クールやそれ以上を見終わったりすることもある。多分2−300作品は見ているから、世間の中ではちょっとアニメ好きくらいなのかな、と思う。

 

これを機に好きな制作会社やアニメ制作の流れを知ってみたり、業界全体を見渡して見るのも良いかもしれないなと思えた!

好きなものを自分の言葉で語れるようになったら楽しそうだし、とくに仕組みやお金の話が気になる。アニメーターが作画1枚200円ほど業務委託契約で死ぬほど描いてなんとか食っていける、みたいな話は社会問題そのまんまだし、搾取を生んでしまう構造的問題は業界が違くても共通する部分がありそう…

楽しめればなんでも良いや、とすら思ってただ消費していたけど、社会の中のアニメ業界として理解しようとするのも深い楽しみ方で良さそうだな〜

(ちなみに制作会社はa-1picturesが好きです!音楽がよい!背景美術もすこ!sao1−2期が好きだったので伊藤監督が好きって方が強いのかもしれない。富豪刑事も良かったし。)